師走の書きちらし

焼きリンゴが美味しい季節だ。紅玉のすっぱみが火を通しての甘味とうまく調和している。ばおばぶでの冬の人気商品だ。紅玉の出回る期間は意外と短い。冬といってもクリスマスでそろそろおわりかなあ。

大昔私がまだ幼稚園生だった頃、父が横浜のニューグランドのレストランへ連れて行ってくれた。弟も母もいなくて私一人だったのを覚えているが、美味しいものを食べさせてあげるよ、と言われカフェのようなところで、カウンターの近くの小さなテーブルで父と二人で座っていると、焼きリンゴが出てきた。食べてみると、生まれた初めてのとろけるような美味しさを感じた、おとぎ話のような感触だった。支配人のような人が、「この後ろのところをきちんと塞いであるのはコックさんがじょうずだからなんだよ、お嬢ちゃん」と言ってたような気がする。父と顔見知りらしく二人で何やら喋って愉しそうだった。

今ならリンゴの芯を抜く簡単な道具があるが、昔はナイフ一本だ、昔のコックさんてすごいなあ、と思う。芯抜きを使いながら自分のぶきっちょさに呆れる今の私だ。

果物というのは温めると何やら甘みが増すのではないか?バナナも炒めると甘いでしょ。(これはね、ヘンリー・ムーアの小説の中に出てきて、真似してみて気に入ってます)

関係あるのだかないのだか、人というのは触れると甘みを増すのではないか?と夢の中で思いついた。

やはり昔のこと、ある思いをかけている人と二人きりで喫茶店にいて、テーブルの上に置いた私の手に彼の手がそっと近づき指を掴んだあの時、体がポッと熱くなったよね。それから私は甘くなった。

恋人同士はお互い触れ合うことで甘みを増すよね。恋人じゃなくても、友達でも親子でもそうだ。

スキンシップは大切なんだと思う。握手とか、ハグをするとか、したほうがいいと思う。しないよりは温かみをますよね、その温かみ、甘味は愛に発展する。愛が大切だ。これは性的な関係性につながると、男さんたちはいつでも考えているようだけど、愛というのはエロス以外にもたくさんの路がある。

対話という今盛んに言われていることだけど、これも他者への働きかけで、相手を無視してない、ということで、言葉でお互い触れ合うことだ、と思う。人は触れ合うことで成長するし、だからこそ生き延びたのかもしれない。石器時代からずっと混血を重ねてきて生き延びて来た人類だ。「交雑する人類」とか言うヒトゲノムに関する本を読んで思った。醜い面もたんとあって、人は生き延びてきているのだけど、そうではない、自己の内側の悪と戦い克服することで生き延びているのも人である。前の世代よりは少しはましな生き方をしようではないか、というその本の著者の言葉には、笑ったものの、すごくまともだ、そうだ、これだよ、少しまし、ぐらいしかできないよねえ・・・そう意識する人が一人増えるだけでも人類の成長のためにはなる、と固く信じている、のが私です。

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